とある紡績工場の思い出
撮影時期:2006年冬
カメラ:CONTAX T2
取り壊し直前にすべり込みで撮影できた物件。
このリバーサルフィルム以外にモノクロ、
二眼レフ(海鴎)でも撮影している。
今思えばお恥ずかしい限りだが、現場入口を固めていた警備員さんに
敷地内の撮影を直接交渉するという無能っぷりを晒したあげく
(お前さぁ…アホちゃうか)と蔑んだ薄ら笑いで追い払われた私。
そりゃそうよ。
警備員さんは正しいことしているんだからね。
でも、どうしても撮りたい。
今だったらさっさと諦めてしまいそうだが
まだそこそこ若かった私はどうしても諦めきれない。
しばらく思案しながらふとある伝手を思い出し、
まぁイヤラシイ話なんだけどコネを使ってなんとかその日のうちに
撮影に漕ぎつけることができた。
陰鬱な気につつまれたこの空間は
我を忘れさせるには充分すぎた。
真冬で日没まであまり時間がなかったため
とにかく夢中で撮り続けた
時間がないため敷地内は走って移動したせいで息が上がり
フィルムチェンジする手が震えていた。
たしか許可をもらって出戻り入場する時だったと思うが
先程の警備員さんがこちらを見ていた。
あのときの苦々しい表情を今でもぼんやり覚えている。
思えば私もなかなかに失礼だったし申し訳ない気持ちもあって
ひとこと詫びるべきだったが、なぜかできなかった。